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昨年11月還暦を迎えたと思ったら、あっという間に1年が過ぎてしまいました。新型コロナウイルスの影響で試合が無くなり、仕事の関係もあって外出もままならず練習にも行けていません。筋力アップを目指して通い始めたスポーツクラブも行けなくなり、1年間の会費を先払いしていた約半分近くを捨てることにもなってしまいました。
若い頃であればこの1年を取り返すことはそう難しいことではありませんが、この年になっての1年間の喪失は取り返せそうもありません。さらにカラダの老化は自分の想像を超えたものになってきました。動かない、曲がらない、痛い、治らない、痛みの質もこれまでには感じたことのないイヤ~な痛みを感じます。
そんなことでこの1年を振り返りまがら、今後どこを目指していくのかを整理してみたいと思います。
60歳の野望
私のピッチャーとしての現役生活は、西村信紀というすごい選手の登場とともに終了しました。彼の登場までは日本リーグや全国大会でも投げていましたし、それなりの成績も上げたりもしました。ただ私のスピードは全国で通用するレベルではありませんでした。そこで見出したのが「コントロールで勝負する」というスタイルでした。
ボール半分の出し入れと緩急、そして重い球質で勝負していました。バッターからすると打てそうなボールが来るんです。しかし打ちに行くとちょっとバットの芯を外れる、捉えたと思ってもちょっと詰まるみたいな感じでアウトになるって感じでしょうか?私自身は自分が投げたボールを打ったことがありませんので、どんな感じんなのかは分かりませんが、調子の良い時は外野にもなかなかボールが飛ばないことがありました。
しかし自分自身は軟投派などという意識は全くなくて、「打てるもんなら打ってみろ!」と投げ込む本格派のつもりで投げていました(笑)そんな短い全盛期では日本リーグで59球、一般男子(今の全日本総合)で53球という最小投球数の記録を作ったりもしました。これもあの時代だったからこその記録です。今のボールとバットでは、私なんかのレベルでは滅多打ちされておしまいになってしまうでしょう(笑)
この投球スタイルも「試合で勝つためにはどうすればいいか?」を考えた末にたどり着いたものです。その後西村信紀という大投手が出現してバッタバッタと三振を取る投球を見ていると自分の力のなさを痛感しますし、「あんな風に三振を取りたいな!」と思ってしまうのも事実でした。
そして時は流れます。私が「速いボールが投げたい」とツースッテップ投法に挑戦し始めたのが57歳の時だったと思います。皆が年を取ってきてスピードが落ちてきている今なら、速いボールで勝負できるピッチャーになれるんじゃないかという邪な心もありました。さらにもっと言えば皆年を取っている実年の後半やシニアだったら、ストレート一本で抑え込めるだろうという傲慢な野心がありました(笑)
しかし世の中はそんなに甘いものではなかったんです。ボールはそんなに速くはなっていません。ピッチングはやっていますが試合で勝つためなんてことは毛頭考えてないので、ただただスピードだけを追い求めています。強く手を振ろうとするとどうしてもコントロールは甘くなります。練習ではある程度狙っては投げていますが、求めているのはスピードだけであって、それも自分の手に残る感触であったりボールの勢いだけを得るためだけに投げていました。
本人は別に試合で投げなくてもいいんです。どっちかというと自分のボールに満足していないので、試合で投げて負けるのもイヤなので投げたくないと思ってもいました。それでも時々投げることになります。そうするとどうしてもストライクが欲しいので腕のスイングが遅くなりますし、普段そんな練習をしていないのでコントロールがままなりません。カウントを悪くして打たれる、フォアボールやデッドボールを出してしまうなどという結果になります。
いろいろ試行錯誤しながら過ごした約4年でしたが、心の中はあくまでも「速いボール」を投げるにはどうしたらいいか?でした。
これから目指すもの
試行錯誤は無駄ではなくて、その中ではいろいろ気づくこともありました。それが今年練習参加自粛中にまとまってきました。幸い週に1日はピッチングする機会はありましたし、これがキャッチャ-と1体1の練習でしたので自分のやりたいことだけをやればいいという有難い環境でした。最近はもう全体練習なんか行かなくていいや、ここで自分勝手に投げていれば打たれることもないし、思うようなボールが投げられたら自己満足できるのでここが最高の場所だくらいにも思えることがあります(笑)
速いボールを投げるためには、カラダはこう使ったほうがいいというものもいくつか見つかりました。実はこの答えは私がYoutubeにアップしている西村さんの動画の中に何回も出てくるのですが、その撮影当時には私は「なるほど!」とか「そうか!」と言いながら良く理解できていなかったんです。今自分で動画を見直してみると生返事が多くて「分らんな・・・」と頭の中で言っているのが良く分かります(笑)分かったふりをしてたんですね。
言葉で伝えるしかないんですが、言葉って難しいですよね。西村さんのあの言葉がやっと今自分の言葉に変換されて、自分の中に入ってきたという感じです。
これが出来ていないからこうなっている。この形が出来ないからボールが速くならない。理解できたものからやってみようとしました。するとボールの質が変わるのが分かります。「よし、これだ!」と思ったのもつかの間、翌日以降カラダに変調が起こります。今まで感じたことがない痛みがあります。痛みはたいしたことなくなっても力が入りません。休んでも回復しません・・・・・
これが今まで感じたことのない老化でした。3年前の動画を見てみるとカラダが動いています。たった3年ですが、相当違ってきました。正直不安です。この先どれだけ動かくなるんだろう?そんな中でこのままスピードだけを追い求めていけるのだろうか?と思っています。
こんなこと60を超えたおっさんのやること?って思っています。なので少々モチベーションも下がってきて、仕事が終わってからのランニングやトレーニングの頻度と強度が落ちています。けれどやらないと動けなくなりますし、現況維持はしておかないとと思ってやってはいますが、気持ちは入りません。
飛んで投げる
今年の一人練習は腕の使い方を意識するために飛ばないで投げてきました。その動画をアップすると「飛ぶの止めたんですか?」とコメントいただくこともありましたが、飛ぶことを止めてはいません。不器用なので飛ぶことを意識すると腕に対する意識が薄くなるんです。飛んだカラダの動きに勝手に腕が回ってしまうって感じですかね。
飛ぶことは走り幅跳びや走り高跳びの助走みたいなものですから、速いボールを投げるために反動をつけるという重要な要素になります。なかなか上手く上に飛べていなのでカラダの動きをボールに伝えられていません。
さらに若い頃のような瞬発力も筋力もない今、若い頃のようには投げられなくて当たり前なんです。走力は100mで5秒以上も遅くなっているでしょう。握力も80キロくらいはあったものが、今は50キロくらいになっています。私の20歳ころにはスピードガンは身近にはありませんでした。なのではっきりとした数字はわかりませんが、たぶん一番速い時でも110キロ行くか行かないスピードだったはずです。日本リーグで投げていたころは100キロくらいじゃないでしょうか。
それからするともうすぐ61歳をむかえようとしている今、これくらいのスピードで投げているのは奇跡なのかもしれません。西村さんが簡単に120キロくらいを投げていたので、頑張ればそこそこ投げられるんじゃないかと考えていましたがそうはなっていません。しかし私なりには結構頑張っているのかもしれません(笑)これが実力なんでしょうね。
目指すのはスピードガンで105キロくらいですね。数字としてこの記録が出れば、本人としては大満足です。ただ最近気がついたのは投げて自分で手ごたえのあるボールがキャッチャー(バッター)にとって速く感じるとは限らないということです。そんなに手ごたえはないボールでも、受けたキャッチャーが「今のボール速かった!」と言ってくれることがあります。自分の感覚なんて当てにならないということなんです。
神宮球場で開催されたオールスターゲームを見に行ったことがあります。当時横浜ベイスターズの抑えをやっていたクルーン投手が投げたボールは、それを見た観客が「オー!」とうなるくらい速いのですが、バッターのバットには当たるんです。しかし球児の投げる球速150キロ前後のボールにはバットが当たりませんでした。プロ野球の選手が「球児のボールはバッターボックスに入った時が一番速く感じる。」と言っていましたが、バッターが速く感じるって単純な球速だけではなくて、ボールの伸び、回転数、初速と終速の差などによっても感じるものなんだということでしょう。
さらにスピードは変わらないけど「重いボール」と「軽いボール」があること。つまりボールにはスピード以外に「重さ」や「強さ」という要素があるということです。ただ今のバットではこの「重さ」と「強さ」は帳消しになってしまうことがあるので恐いですけどね。
この約4年くらい「速さ」だけを意識してきました。最近は少し手ごたえみたいなものも感じていますが、速さだけでは簡単に打たれてしまうことも分かりました。そしてシニアになって1m近く前になったプレートの距離も味方ばかりはしてくれないことも分かりました。
確かに近くから投げるので、手から離れてからキャッチャーのミットに入るまでの時間は短くなります。それはピッチャーにとって有利なことになるでしょう。ただこの短くなった距離ではボールが変化せず真っ直ぐ進んでしまうことになります。「真っ直ぐ行くとバットに当たります。」西村さんが言っていた言葉です。特に力任せに投げ込むと初速と終速の差が大きく、バッターと手元では遅く感じるいわゆる棒球になります。それが変化もせず真っ直ぐ来るわけですから、バッターはタイミングさえ取ることが出来たら、それを打つことはそんなに難しいことではなくなりますよね。今の私がそんな状態です。
「良いピッチャーとは、どんなピッチャーですか?という質問の答えは「勝てるピッチャー。」「打たれないピッチャー。」だと思います。
速いボールが投げられるというのは、この答えとイクオールではありません。あくまでも一つの要素であり、それだけを追い求めるのは単なる自己満足でしかありません。私はこれまでそれをしてきました。そしてまだ続けるつもりです(笑)
なのでまだ飛びます。予想を超えた60歳以降のカラダの変化(老化)もありますが、まだ飛べます。もう飛べなくなったら飛ばずに投げることを選択しますが、まだ無理すれば飛べるので飛ぶことを諦めることはしません。なんとか飛んだ勢いをボールに伝えられる飛び方を身に着けたいと頑張ってみます。
ちょっと長くなったので、次回飛び方についてお話ししてみたいと思います。相変わらず横で弘瀬さんが「テイクバックで投げたら?」「テイクバックが一番合っていると思うけどな。」と囁き続けています。なぜ弘瀬さんに盾をつくのか、その理由も詳しく説明してみたいと思っています。