12月に弘瀬拓生先生、1月に西村信紀さんと、日本でもトップの二人の指導のもとピッチングフォームを変えようとする私のチャレンジの、ここまでの変遷をご紹介しましょう。
フォームを変える目的
まず確認しておきたいことは、このチャレンジはピッチングフォームを変えることが目的ではなくて、あくまでも
「バッターに打たれないボールを投げたい。」
という目的で始めているということです。フォームが変わったとしても、そしてその効果としてボールが速くなったとしても、バッターにとってタイミングが合いやすくなったり、コントロールが悪くなってフォアボールばかりになるようであれば、それは全く意味のないものになります。
「速いボールが投げたい。」「空振りの三振が取りたい。」などはピッチャーを志す者にとっては、誰もが夢見るものです。だからしんどい練習やトレーニングにも耐えられると言ってもいいのかもしれませんね。
けれどそれだけを目指して、自己満足だけを得ようとするのであれば、そのピッチャーはチームのエースになることはなかなか難しいのかもしれません。それだけピッチャーは試合を作るという責任があり、重要なポジションだと言えると思います。
スタート時点
12月に弘瀬拓生先生に指導していただいていた頃のフォームがこれです。
これを自分で見て「これはスキップ投法だ!」と言った投げ方です。ここから私の本格的なフォーム改造が始まりました。ここで重要だったのが、自分を客観的に見るということでした。やっていると思っていても、出来ていないことの多さに気がついたことは大きかったですね。
ここから年末までは少しインステップを強調して投げるようになり、ボールの出所が見えづらくなるという効果を生み、少しボールが走るようになって新年を迎えることになりました。
日本の大エースの指導を受ける
2017新年早々に日本の大エース西村信紀さんをつかまえて、「スキップ投法からの脱却」を目指しました。その時のフォームがこれです。
「胸を張るために左手を上げる」
「前に飛び出すのではなくて、上に飛んで間を作る。」
「右手の使い方を変える(ブラッシング)」
この3つが西村さんから出された宿題のようなものでした。この時も必死で変えているつもりなんですけど、動画で見てみると「どこが変わったの?」というくらい変わっていません。一つ目のフォームと比べると左手は少し上がっていますし、スキップだったものが少し軽いジャンプになっているでしょうか。
この時に動画にはありませんけど、ボールの握り方も指摘されて変えて握っていますので、自分としては相当な違和感の中で投げていました。
試行錯誤中
ここから1ヶ月ほど自分だけでの試行錯誤が始まりました。その経過がこの動画になります。
上に飛ぶ、背中を使って引き上げるをどうやって表現しようかと思ってやり始めたのが、セットした後両手を頭上に上げてからそれを下に降ろして振り上げるというものでした。これは昔ニュージーランドのピッチャーがやっていて、若い頃に一度取り入れたことがあった方法でした。
そしてここから暗中模索に入り込んでしまうんですが、フォームばかりを気にするがあまり全くボールが走らなくなりました。西村さんに言われた「力入ります?」で言うと「全くリリースで力が入りません。」ですし、杉本さんに言われた「お前何がやりたいが?」の答えだと「やりたいのはこれなんですけど、ボールが思ったようになりません。」になっていました。その時の動画がこれです。
右手のスタートを遅くしたいのと、左手を上げるために、これまで一緒に上げていた両手を離してスタートしてみようとしています。そのために右手が身体の外に上がってしまって、そのまま外を回るという最悪の回転になってしまっているので、ほとんどのボールが抜けてしまっています。
今この動画を見ると良く分かるのですが、この投げている時は抜ける理由が全く分からず、途方にくれていました。
救いの神現る
どうにもならない暗闇の中をもがいていることを心配したんでしょう。今年初の試合の会場に、今は「高知龍馬マラソン」の練習に専念されている弘瀬拓生先生が出現しました。そして試合の合間に練習をしていた私のところに近寄ってきて、「どう?撮っちゃお。」と動画撮影をしてくれました。
その時の動画がこれです。
最初は撮影だけだったんですが、そのうち見ていられなくなったんでしょう(笑)指導が始まりました。以前ご紹介した動画のように誰かに見られることを意識していませんので、土佐弁丸出しの指導になっています。
そして今考えられる改善点を修正するための、アドバイスをもらってのピッチングがこれになります。
「背中を使え。」
[左手を身体の中に」(外に出て後ろに引いてしまうと、身体が横ブレを起こしてしまう。)
この二つをやることで、広げた胸(張った胸)を締めて鋭いリリース(腕の使い方)が出来るようになるということを体感させようとしてくれました。
「背中を使え」はスタート時点で身体を起こす時や、腕を振り上げる時に意識したことはありましたが、リリースの時に「背中」を意識したことがなかった私にとっては、新鮮であり驚きの言葉でした。
けれどその「背中」を意識して投げるとボールは走りますし、確かに「背中」を使っているという感じがあります。「一流」はこんな言葉を使っているのかと二流のレベルの低さを思い知らされた瞬間でもありました。
他人の目
この日力が入ったのには、弘瀬拓生先生のアドバイス以外にもう一つ大きな要素がありました。それは他人の目が周りに多くあったということでした。
動画を見てもらっても分かりますが、この日は試合で次の試合に向けてアップをしている選手がたくさんいました。中には私の投げている姿をじっと見ている人もいました。あまり気にはしていませんでしたが、それでもみっともない姿を見せるのもどうかと思いますよね。
そして知らず知らずのうちに力が入ることになります。キャッチャーは年末からずっと受けてくれている人ですので、このところの絶不調も知っています。そんな抜け球ばかり投げていた私が、見違えるようなボールを投げるので驚いたようでした。
やはり他人の目を意識することも必要なんだなあと思ったことです。練習ではあまり良くなかったけれど、試合でバッターに投げるとなると力が出たなんてこともありますよね。まあ、練習では良かったけど、試合では力んでしまって駄目だったってこともあるので、功罪両方ありますが、この日に限っては良い方向に力が出た1日になりました。
これからどんな風になって行くのか、引き続きご紹介して行きます。