宮平投手のライズボールについて文字でお伝えしたところ、友人から質問のメッセージが入りました。
ライズボールのバックスピンのかけ方
「上からはじくようにバックスピンをかけるという表現を使っていますが、具体的にはどういうことですか?」
そうですよね、分かりにくいですね。
送った回答がこれになります。
「リリースのときに捻るのではなく、ライズの基本である手のひらが上の状態から素早く手首を返して手の甲が上を向くように動作で、ボールを人差し指で切る(これは人によって「押す」「ひっかく」などの感覚の違いがあると思います。)ことによって、バックスピンをかけるということになると思います。」
やはり文字ではなかなか伝わりませんね(汗)
この技術簡単ではありません。ボールを長く持つ必要がありますし、出来るだけ前でボールを離すことも要求されます。ボールがバックスピンするだけでは意味がないからです。ピッチャーはバッターを抑えるためにボールをなげるのであって、ボールがただバックスピンするだけではバッターは抑えることができません。
もともとライズボールは回転数の多いボールで、当れば遠くに飛んでいく危険性のあるボールです。ですからドロップとライズを投げられるピッチャーは、ピンチになるとどちらかというとドロップを選択することが多いように想います。
最後はライズボールで勝負できるピッチャーはそんなに多くないんですね。ただ最近のバッターのスイングを見ていると、どちらかといいとアッパースイングぎみの選手が多くなっているように感じますので、勢いのあるライズボールを投げることができると抑えられるなあと思うことがあります。
ライズボールとドロップの投げ方の違い(上体)
ただ握りとリリースを覚えただけでは、バッターが脅威に感じるライズボールを投げることはできないと思います。それは身体の使い方です。それぞれ投げ方があって、ライズボールが投げやすいからだの使い方をしている選手と、ドロップが投げやすいからだの使い方をしている選手がいるんです。
投げた時の姿勢が「人」という文字に近い選手はライズボールです。逆に「入」という文字に近い選手はドロップです。分かりますでしょうか?上体の角度と言ったら分かるでしょうか。上体が上を向いている選手はライズボール、上体が下を向いている選手はドロップですね。
西村信紀さんがニュージーランド研修のときに現地で教えられたドロップの投げ方は、「インステップして上体をかぶせて、そのまま腕を振る。」だったそうです。握りとか手首の捻りは必要ないんです。そうすると右バッターのインコースにシュートしながら鋭く落ちるドロップになりました。
当時西村さんのドロップを簡単に打ち返せるバッターは日本にはいませんでした。このサイトに西村さんのライズボールを紹介している動画がありますが、そのやり取りの中で本人が「私はどちらかというとライズボールは得意ではなかった。」というようなことを言っています。
西村信紀投手のライズボール
西村さんのボールはどれをとっても他に類を見ないような素晴らしいボールなんですが、彼の中ではライズボールは得意なボールではなかったということですね。
西村さんが現役中に指導している場面に同席したことが何度かありますが、「ドロップは上から下に投げる。」「ライズボールは下から上に投げる。」と意識も変えて、さらに入り方も変えていると指導していたことを思いだしました。
もともとのからだの使い方が「入」の投手がいて、なかなか上手くライズボールが投げられないということで、今までとは違った握りと捻りかたを教えてもらっても、少し軌道が変わったとしてもバッターを抑えられるライズボールにならない原因はここにあります。
「投げ方が違う=からだの使い方を変えないと、ボールは変わらない」ということじゃないでしょうか。
ライズボールは浮いていない?
以前元デンソーの村里投手のライズボールを研究した結果を紹介したことがあります。高速度カメラで撮影して検証していましたが、村里投手のライズボールでさえ、実際には浮いていないということでした。科学的にはそうなのもしれませんが、実際に自分でバッターボックスにたってそのボールを見た経験からすると、村里投手だけでなく、宮平投手、西村投手、弘瀬投手、他ライズボールを武器に戦っていた投手のライズボールは間違いなく浮いていました。言い換えれば「バッターには浮いているように感じました。」です。
ニュージーランドのピッチャーなどの「ローライズ」は、低めのボールの高さから胸くらいまで浮いてきたような記憶さえあります。こんなボールにはからだは全く反応しませんよね(笑)
握りや捻り方を変えてみるのも一つの方法ですが、自分が「人」なのか「入」なのかを確認してみてはどうでしょうか。そして最後が「人」になっているピッチャーは入り方もそうなるようになっているはずです。最後が「入」になるピッチャーはそうなるように入っているはずです。
ライズボールの攻略法
途中から軌道修正できる選手はそんなに多くありません。試合で投げ分ける場合はそれを変えるだけでいい場合もあります。そのフォームの違いで球種を予想しているバッターはそんなに多くないということです。これがレベルが上ってくるとその入り方の違いであったり、腕の使い方であったり、握りであったりを見て球種を見破られたりします。
けれどピッチャーはわざと握りを見せて、違うボールを投げるということをすることもあります。宮平投手のチェンジアップの動画にもありましたね。「わざと握りはライズボールと同じにしている。」
この腕の使い方の特徴をしっかり見極めて、打てそうもないドロップを捨てて、打てる可能性のあるライズボールを狙い撃ちにしたのが沖縄県でした。そして狙われたのが西村投手だったんです。やはり西村投手が言っているようにライズボールは得意なボールではなかったということでしょう。
けれどいろいろ投げられるピッチャーは、同じボールばかり投げていると狙われると思って、どうしても違う球種を投げたくなります。そして間違いを犯すわけですね。
狙われていると分かっていてもライズボールを投げる。そして打たれる。投げたい理由も分かってはいますが、その選択は間違いやと西村投手は二人のヒロシ君に怒られたと書いていました。
ピッチャーって大変ですね。けれど面白いポジションなんです!
二人のヒロシ君とは杉本博司さん(元闘犬センター監督)と私です(笑)