(ソフトボール・ルール)審判がイリガリーピッチを宣告したら?
ピッチャーが不正投球をして、審判が「イリガリーピッチ!」と宣告したら、その瞬間にボールデッドになってプレーが止まると思っていました。どうもそれが違いみたいなので解説してみたいと思います。
日本女子ソフトボールリーグ1部の試合で
5月25日(土)愛知県の刈谷球場で行われた豊田自動織機対NECの試合の5回表、NECの先頭バッターの打ったホームランの場面でそれは起こりました。
ビデオを見ている限りは普通にセンターオーバーのホームランだなと思ってみていましたが、その後なかなか試合が再開されませんでした。何かもめているようなんですけどビデオでは何をもめているのか分かりませんでした。その後両監督が呼ばれ、球審がマイクで説明しているんですがそれも良く聞き取れないので、何が何だか分からないうちに試合が再開されました。分かったのは「ホームラン」になったということだけ。
訳が分からないので豊田自動織機の山崎コーチにラインで「いったい何でもめていたの?」と聞いてみました。すると「イリガリーピッチが宣告されたので、ピッチャーが力を抜いて投げたボールをフェンスオーバーされた。」と返事が返ってきました。「ん?イリガリーピッチ。」「ならボールデッドになるがやない?」とまた返信しましたが、気になったのでルールブックで調べてみました。そこには驚くべきルールが書かれていました。
不正投球のボールを打たなかった場合
ルール6投球の7項の中〈効果〉1項~7項にこう書かれています。
(1)投手が不正投球をし、打者が打たなかった場合。(空振りのときも含む) 1)ディレードデッドボール。 2)打者に対してワンボールが宣告される。 3)走者に1個の安全進塁が与えられる。 (注)与えられた塁に達したのちも、走者はアウトになる危険を承知で進塁できる。走者が正しく進塁すれば、その進塁は認められる。
普通こうなります。審判が大きな声で「イリガリーピッチ!」って言うと選手はプレーを止めてしまうからです。ピッチャーは投げている途中で投げるのを止めることは難しいのですが、それ以外の選手は「???」と思ってプレーしないのが普通だと思います。ですからこのような不正投球があった場合、上記のルールが適用される場面しか見たことがありません。
ビデオを見ている限り山崎コーチが言う「ピッチャーが力を抜いた。」ようにはそんなに見えないですし、そんな風に投げられるかな?という疑問も湧いてきます。私自身はイリガリーピッチを宣告されたことがないので何とも言えないのですが、「イリガリーピッチ!」と投げている途中で言われてもそのまま投げてしまうような気がするんですが。そして普通バッターも動きを止めてしまうことが多いと思うのですが、この場面では普通に打っていますね(笑)
不正投球を打った場合
今回の場面はこのルールが適用された訳です。
(2)投手が不正投球をし、打者が打った場合(空振りのときを除く) 1)ディレードデッドボール。 2)攻撃側の監督にプレイを生かすか、不正投球をとるかの選択権が与えられる。(注)不正投球を打者が打って一塁に進み、他のすべての走者が少なくとも1個の進塁をしたときは、その不正投球は取り消される。
この試合では2)によって攻撃側のNEC藤本監督がホームランというプレイを生かすを選択したことになったようです。
ルールブックは完璧
長いことソフトボールをやってますが、「ん?、これはどうなるが?」と思うようなプレーはそんなにありません。普通にアウト・セーフが判定されて試合は進んでいくものです。ですから選手は詳しいルールなんかの勉強はしませんし、知っている必要性を感じることもありませんよね。
めったにおこらないようなプレーでも、ルールブックにはその判定方法がきちんと書かれていました。今さらながらルールブックは凄いなと思います。めったに起こらないプレーの判定をするためにルールブックを熟知している審判の方を尊敬しますし、指導者(監督・コーチ)の方はルールブックに目を通しておく必要がありますね。
今回のプレーで、その思いを強くしました。そして自分の知識のなさに愕然としています。