投げ方ということで腕にばかり注目してきましたが、先日アップした西村信紀さんの若い頃の動画を見ていて気がついたことがありましたので、書いてみることにします。
野球と同じ?
まずこの西村信紀さんの動画を良く見てください。
見てくれましたか?
そしたら今度は西村信紀さんの左足に注目して、もう一度よく見てください。
普通のソフトボールのピッチャーと違うところに気が付きましたか?
説明しますね。左足が着地する時には曲っていた膝を、ボールを投げる瞬間に伸ばしているのが分かりますよね。その動作によって上体がさらに前に引き出されるような動きになっています。
スローモーションのところを見てもらうともっとハッキリしますが、全力投球をしている時には膝を伸ばすだけではなくて、左足を後ろに引くような形になっています。
ここでは肖像権などの問題があって紹介出来ませんが、プロ野球の速球投手と呼ばれるピッチャーにも同じような動作が見られます。
大谷翔平投手の全力投球や藤川球児投手の全盛期の動画を見てもらうと、西村信紀さんの左足と同じ動きが確認できると思います。
腕のスイングの速さだけに目が行ってしまいがちですが、腕を鋭く振るためには足をどう使えばいいかという見本なのかもしれません。
しかしソフトボールでこのような足の使い方をしているピッチャーは、あまりいないのではないかと思います。私もこの動画を何度か見直していて、何か普通とは違うと思って気が付いたくらいですから。
理屈で言えば足で地面を引っ掻くようにして上体を前に出して行けば、強いボールが投げられるようになることは分かりますが、なかなかこの動作を入れることは簡単なことではありません。
成熟した西村信紀さんのフォーム
そこで成熟した(年を取った)西村信紀さんの投球フォームに、このような足の動きがあるかを見てみました。
闘犬センターが無くなって移籍した大阪グローバル時代の動画ですので、かなり成熟した時代の動画ですが、やはり強いボールを投げる時には同じような足の動きが見られますね。フォーム自体は若い頃のような躍動感は減って、いろいろな球種を狙ったところに投げようとしているのが分ります。
投球を背骨を中心とした回旋運動と考えるのであれば、右投げの場合右の腰を前に出して行きたければ、左の腰を引いてやればいいことになります。
左足で壁を作って体が止まるので、上にある右肩や右腕が走ることにまります。これに左足を引く(地面を引っ掻く)動作が入ればさらに右を鋭く前に出すことが出来るようになると考えればいいのではないでしょうか。
これはあくまでも速いボールが投げたいのであればという前提のお話しです。この足の使い方が出来て、腕も素早く振れたところでストライクが入らないようではピッチャーとしては完成しません。
ですから良いピッチャーの条件は速いボールが投げられるだけではないということです。いろいろなタイプのピッチャーが活躍できる可能性があることで、ボールが速くない私なんかには勇気をもらえるわけですけどね(笑)
きちんとボールを回転させる
先月香川に試合に行った時に弘瀬拓生先生と同じ車になりました。同乗していた後輩が弘瀬拓生先生に
「先生の考える日本一のピッチャーは誰ですか?」
みたいな質問をした時に、弘瀬拓生先生は
「やっぱり西村やろうね。どのボール投げてもきちんとボールを回転させられるのはあいつやね。」
という返事をしていました。
そうなんです、速いピッチャーは日本人でもいるんですけど、外国人のようにボールにスピンをかけられるのは西村信紀さんが一番なんです。
若い頃の西村信紀さん(上の動画)は、投げてみないとどっちに曲がるか分からないみたいな時もありましたが、成熟した頃(下の動画)の頃にはちゃんとどっちに曲げるということが出来るピッチャーになっていました。
投げている人間がどっち向いてどれだけ変化するか分からないボールを、バッターがそう簡単に打つことなど出来ません。ピッチャーとして成熟しても、ボールの軌道が安定してこう曲って来るだろうという予測が出来るようになると、バッターに打たれることも多くなるということにもなってきますので、ソフトボールとは難しいものです。
やはり世界はすごくて、ボールのスピン量も変化もこんなに回転するかとか、こんなに曲がるかとかいう感覚を覚えることがあるんですが、西村信紀さんは比較的外国人の投げるボールに近いボールが投げられる日本人でした。
ですから私たちは西村信紀さんのことを
「世界の西村」
とは呼ばずに、
「アジアの西村」とか「アジアのエース」
と読んでいました(笑)
知れば知るほど私は、とんでもない化け物に挑戦していることになります(笑)