ピッチャーの悪いクセである「力み」についての質問が来ました。
今回の質問に弘瀬先生はどのように回答するのでしょうか。このような技術的な質問に文章で答えるって、簡単なようで難しいんですね。相手の顔も見えないですし、ピッチャーとしてのレベルも完成度も見えないんです。弘瀬先生も出来るだけ分かりやすく書いてくれているのが、手に取るように分かります。それではどうぞ。
質問:力む癖
【質問1】①力む癖について
試合中など、つい腕が力んでしまう癖があります。
投球後に自分でも力みを実感してはいるのですが、
次の投球前に「力むな」と自分に言い聞かせてはいますが、なかなか力みが取れない時があります。常に脱力して腕を回すコツがあれば教えてください。
【回答】①力む癖について。
力むということは、肩や腕に「余分」な力が入り、スムーズな腕振りができていない状態だと思います。
投球の際に体には当然力が入ります。全身の脱力をして投球をするということは無理がありますので、何らかの力は体に入っていると思います。
ここで、投球を腕の「振り上げ」と「振り下ろし」、「リリース」に分けて考えると、すべての場面で同じように力が入ってしまっては、投球のリズムに強弱がなくなってしまいます。最終的には、リリースでいちばん力を入れたいので、その手前の「腕の振り上げ」が終わった時の「腕が真上」に来た時に一休みしたいものです。ここが一呼吸置くところの「脱力」になろうかと思います。そして、腕の振り下ろしに向かいながら力が入り始め、リリースでボールを押しだします。いちばん大事な部分は、「リリース」ですので、ここに力が入るような感じが出来始めたらその手前では、力が抜けてくるのではないでしょうか。腕だけに神経を集中するのではなく、背中や腰も上手に脱力して、投球リズムをつかんでください。
体のバランスも投球には大事なことです。
スリングショットで練習をすると、リリースの時に力を入れる感覚がつかみやすいと思います。
また、「ウィンドミル投法のためのチューブトレーニング」(NSAB「山崎浩誌」発売)でもそのタイミングについては、練習できるように説明をしありますので参考にしてみてください。
質問:ボールを押すとは
【質問2】②リリース時にボールを押すこと
先生のDVDの中でボールを押すとありましたが、ブラッシングからリリースまでの短時間でどのようにして押したらよろしいのでしょうか?指で押そうと意識するとボールを持ちすぎてしまい、キャッチャーも取れないような高めに行ってしまいます。ボールの押し方を教えてください。
【回答】⓶リリース時にボールを押すこと
ボールを押すとは、からだ全体で押すことを言います。
最終的には「指先」でボールを押すのですが、セットポジションから前方に一歩踏み込みますので、体重移動があります。体重移動して腕を振り上げ、振り下ろし、リリースに向かいますが、この時に体全体でボールを押すような感じでリリースに持ってきます。体と腕全体を前方向(投球方向)に移動します。
体全体でボールの方向性を持つことができれば、その方向に腕と手のひらを向けていけば、コントロールしやすくなります。決して、指先ではじき出すような感じではなく、手のひらで押しながら最後に指先に引っかかる感じです。キャッチャーも捕れないような高めに行くのは、指先でボールを弾きだそうとする意識が高いからではないでしょうか。押しながら最後に引っ掛ける感じ・・・。
ドロップと、ライズボールでは多少感覚が違ってきますが、途中までは体と腕でボールをリードしてきます。
最後の最後に、リストを利かしますが、意識的に手首を使う感覚は少ないと思います。
体でボールを押すことも「ウィンドミル投法のためのチューブトレーニング」紹介していますので、ぜひご覧になってください。
※ 言葉では、十分な説明になるかどうかわかりませんが、参考にして頂けたら幸いです。
また、今回の質問にもあるような内容に、お答えできるDVD作成も検討していきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
どうでしょうか?お分かりになったでしょうか。ちょっと宣伝も入っていますが、この弘瀬理論のピッチングを習得するのには「ウィンドミル投法のためのチューブトレーニング」を実践することが完成への近道になると思います。
誰から教わるか
けれどこの答えを聞いても頭で理解出来ても、それを身体で表現出来るかはやってみないと分からないんです。私としても簡単に「質問受け付けます。」と始めたものの、これでいいのだろうかといつも考えています。
手の長さも足の長さも違う、関節の可動域や、筋肉の特性も違う人が、同じ理論で投げてもその投げ方、ボールの回転、速さ等は全く違ったものになります。それが当たり前なんですね。
形を押し付ける指導法もあります。それぞれの特徴(強み)を生かす指導法もあります。どちらが正解ということもありません。結局は結果を出させてあげられるかどうかなんだと思います。
重要なのは「何を教わるか?」ではなくて、「誰から教わるか?」じゃないかなと思います。指導者次第でピッチャーとしての完成までの時間も違ってきますし、到達できる場所も違ってくるはずです。良い指導者にめぐり会えるといいですね。