速くてキレの良いボールを投げるためにいろいろやってきましたし、いろんな理論をこねくり回してきましたが、どうもこの「後方遅延現象」という理論が私に欠けているものであることに気が付きました。この理論を聞いた時は「これだ!」「これが自分が速くてキレの良いボールが投げられない理由だ!」と確信しました。
後方遅延現象とは?
後方遅延現象を科学的に説明するとすごく難しいことになるようで、検索して調べてもみましたが、大学の先生の論文などは難しくて全く理解できませんでした。ですからここに書くことは科学的には間違っているかもしれませんし、言葉が足らないことになっているかもしれません。しかし私はただのソフトボールをしているおじさんなので、単純に速いボール、キレのあるボールを投げるために必要な技術を説明する言葉として用いらせてもらいます。どうかお許しください。
簡単に言うとボールには質量(重さ)があって、それはそこに留まろうとする力が働くんです。何か専門的に聞こえるでしょう?(笑)
腕を回して後ろに引いた時にボールを強く握っていなければ(力を入れていなければ)、ボールはそこに留まろうとする。その時にカラダ(体幹・脚・腰)を捻って行くと、ボールが少し遅れて前に出て来る現象を言うみたいです。ボールを強く握っている(力を入れている)と、その遅れるという間がなくカラダと一緒に前に出ていくので、腕はしならず、ただ遠心力のみ、腕の力のみで投げられることになってしまうことになってしまいます。これでは腕が外から回ってくるので、バッターからも見やすくなってしまいますね。
力んで投げるという状態は、一番悪い投げ方になっているという証拠にもなります。力を入れるのはリリースの瞬間であり、それまでは力を入れないようにしないと、後方遅延現象も起こらないんです。
脱力する意味はその後に力が入るようにするためだけでなく、速くてキレのあるボールを投げるため、後方遅延現象をりようするためにも必須の条件なんです。
生まれ変わりたい(笑)
小さなころからカラダは大きな方でした。力もある方でした。なのでフォームだとかカラダの上手な使い方なんか考えなくてもボールは遠くへ飛んでいましたし、まずまずのスピードも出ていました。まあ小さなお山の小学校、中学校のことですから、たいしたことはなかったんですけど、「井の中の蛙大海を知らず」なので自分はやれるんだと思って大きくなりました。
その力に頼った悪いカラダの使い方はしっかり身に付いていて、いろいろな正しいカラダの使い方や新しい技術は理解出来ても、カラダで表現することはなかなか出来ることではありません。一回身に付いてしまったものを、違った形に変えるのには時間と根気とセンスが必要なようです。
書き換えるよりは、一回削除して最初から書いた方が楽なのですが、人間のカラダはそうはいかないようです。まして60歳前の衰えたカラダですので、思ったようには動いてくれません。
「生まれ変われれば・・・」「もう少し早く気がついて、トライしていれば・・・」などと思うこともありますが、出来ないものは仕方ないので、出来ることをこつこつ続けていくしかありません。
幸い私の目標は「70歳にして西村信紀に勝つ!」ですから、まだ10年もあります(笑)選んだ道の困難さから70歳という年を設定した訳ですが、ここまで思うようにならないとも思っていませんでした。もうちょっと自分はやれそうって思ってたんでんですけどね(笑)
西村信紀のボールが速い理由
西村さんの筋力は人並外れています。背筋力計は振り切りますし握力は全盛期100キロを超えていました。なのでその人並外れた筋力で速いボールを投げていると思っていました。確かにあの筋力だと、それだけでもそこそこのスピードボールは投げられるんです。それは間違いありません。高校を卒業して闘犬センターに入ってきた頃はそうだったんだと思います。
その後ニュージーランドに行って、ニュージーランドの技術を習得して速いだけでなくキレの良いボール(特に変化球)を投げるようになってからは、あっという間に日本のエース、アジアのエースになりました。当時の日本のソフトボール界では突出した存在になりましたよね。
ただボールも速いんですがフォームも速いので気が付きにくいですが、西村さんのフォームは後ろがとても大きい投げ方なんですね。その大きさを生んでいるのは強力な背筋力なんですが、大きく後ろに引いた腕をそこに残しておいて、体幹(腰・脚・胸・左手)で引き出してきます。この一連の動作が大きくて速くて強いから、あんなボールが投げられたんです。
後方遅延現象を起こす起点になる手が大きく後ろに引けるのは、強力な背筋力のお陰でしたが、その力があまりにも強いために、その力に抗して前に引き出すために収縮する大胸筋は悲鳴をあげて切れていました。人並外れると、それはそれで大変なんですよ(笑)
そして最後強力な前腕と手首と指の力を使って、リリースの瞬間ボールに強力なスピンをかけていました。なので誰にも真似のできない回転のボールが投げられたんだと、私は確信しています。
自分の投げ方を探そう
こう書くと西村さんの投げ方が一番いいと聞こえるかもしれませんが、あれは西村さんにしか出来ない投げ方ですし、西村さんの真似だけをしていたんでは西村さんを超えることはできません。これからは松田投手(平林金属)や小山投手(日本体育大学)のような投げ方が主流になると思います。小学生の大会を見てみると、本当に上手に飛んで投げていますので、あの子どもたちが大人になると、日本のソフトボールのピッチャーのレベルは相当あがるのではないかと期待が出来ますね。
自分のフォーム、自分のカラダの特徴、強み、弱みなどから自分の投げ方を見つけるしかありません。西村さんのように投げなければ勝てないということもありません。フォームがおかしかろうが、ボールの回転がおかしかろうが、バッターに打たれないボールが投げられれば、そのピッチャーは一流のピッチャーになれます。
周りからもいろんな声が聞こえてくると思います。アドバイス、批判、否定など、いろいろあるとは思いますが、最後は自分で責任を取ればいいことです。ピッチャーって自分勝手な生き物でいいんです(笑)それだけ責任も大きいし、練習もしないといけませんからね。
やるかやらないか迷ったらやってみる!やってダメだったら試合でなげさせてもらえないだけ。人間欲張りなので、もうちょっと良くなるためにって変えたくなるんですよね。周りは今のままでいいのにって思っていても。