ソフトボールのピッチャーは、ほとんどウインドミルという投げ方で投げています。
私がウインドミルを始めた頃(今から42年前)は、
「手の平を外に向けて、肘を伸ばして腕を大きく回せ」
と教えられました。
その形を説明している、故下奥先生(日本体育大学)の写真を見つけました。
それがどうも違っていることに、42年たってやっと気がつきましたので、少しお話してみたいと思います。
肘を使う!
次の写真を見て下さい。私の元チームメイトである「清水源司投手」のフォームです。彼は群馬県の新島学園から日本体育大学というエリートコースを進んでいながら、なぜかアウトロー軍団の闘犬センターでソフトボールをやった変わり者でした。
日本体育大学では弘瀬拓生先生と同級生で、弘瀬先生もこの清水投手の腕の使い方(肘)を見て、ボールの投げ方(特に変化球)を変えたと言われていました。
「肘を伸ばして、腕を大きく回す」ではなくて、
「肘を曲げて、前腕を内旋させながらボールを捻る」
ことによって、ボールに強いスピンをかけることが出来て、それによって鋭い変化球が投げられるということのようです。
「前腕の捻りを使わずに手首だけで捻っても、ボールは変化しない!」
これが正解のようです。
清水投手は素晴らしい変化球を投げていました。長く一緒にプレーしましたが、当時はライバルでもあり投げ方を聞くこともありませんでした。
これがその頃の私です。写真を探してみましたが、ブラッシング前のちょうどの写真が見つかりませんでした。
一度だけ三振の取れるドロップが投げたくなって、清水投手に投げ方を聞いたことがありましたが、いつもよりスッテップを狭くして上からかぶせるよう投げろと教えてもらいましたが、肘を使い方については、なにも言われませんでした。
あの時に気がついていれば、ひょっとすると違った感じのピッチャーになっていまたかもしれませんが、そうならなかったお陰で作った記録もあるので・・・。
弘瀬先生は大学時代にこのことに気がついたことで、今問題なく肘が使えている。私は今の今まで気がついていなかったので、40年間やり続けていた「肘を伸ばす」という亡霊に苦しめられているということです。
例外もいます。
現日本ソフトボール協会福会長の三宅さん(群馬教員のエースであり、日本を代表するピッチャーでした。)は、肘を伸ばして投げているピッチャーの代表です。
写真を見ても、この人ほど肘が伸びている人がいないというくらい、肘は待っ直ぐになっていますね。
ただこの方はここからが特徴的で、手首を単純に屈曲させるのではなくて、野球のアンダースローのように使って投げていました。
この投げ方も若い頃群馬教員が高知に来た時に、マンツーマンで教えていただきましたが、私には消化できなくて、自分のものには出来ませんでした。
三宅さんだけに出来た特殊技術だったのかもしれませんが、こう考えてみると若い頃から日本のトップレベルの技術に触れられる環境にいたのに、何も吸収することなく自分の考え方、投げ方に凝り固まっていたことに気がつきました。
弘瀬先生の肘の使い方
弘瀬先生をつかまえて、肘の使い方について解説してもらいました。実は前週私のピッチングフォームを撮影してもらっている時に「肘」の話になって、これはちゃんと説明してもらわないといけないと思って、動画にしてみました。
この動画を見ると私の変化球が曲がらなかった理由がよく分かります(笑)ですから、この肘の使い方をなんとかマスターして、今までとはちがった組み立てのピッチングがしたいなあと思います。
元トヨタ自動車の田中誠一先輩がいつもいいます。
「ヒロシは高校2年の時が一番速かった。」
田中誠一先輩は名門高知商業の出身です。私は高知の山の中の大正高校(現四万十高校)の出身です。そのころの高知商業はとても強くて、大正高校なんていう高校など試合をしたこともなっかでですし(高知商業が試合する前に負けていた。)、もしやったとしても相手にならなかったんです。
それが秋に中村市で始めて開催された「一条大会」という大会で初対戦しました。最初は舐めていたんでしょうね。負けるはずのない相手だったはずです。
ところが試合が始まってみると、どうも上手くいかない。相手の見たことも聞いたこともない田舎の高校のピッチャーのボールが打てない。
変化球もない、ただ真っ直ぐだけのピッチャーなんだけどボールが速い。
この試合なんと大正高校が高知商業に勝ってしまったんです。そのイメージもあって、田中誠一先輩の中では「ヒロシはあの時が一番速かった。」と言っているようにも思います。
私としては、「そんなことはない。」と思っているのですが、ただ真っ直ぐだけを一生懸命投げていたあの時が一番速かったのかもしれませんね。
高校3年の時は高知県の協会の方から、
「今年の国体には予選で負けても補強で選ぶので、ドロップを覚えてくれ。」
と言われ、あまり当たらなかった腕を体側に当てて投げるドロップを教えていただきました。
するとドロップは少し落ちるようになったんですが、最大の武器であったストレートが走らなくなりました。
調子がもどらないまま国体予選に出場し、1回戦で負けた後協会からの連絡はありませんでした(笑)
あの時肘の使い方を指導してくれる指導者がいたらどうだったんだろう?と思いますね。
時代が時代ですので、そんな知識を持っている指導者もいなかったのかもしれません。残念です。
西村信紀投手の肘の使い方
これまで何度も紹介している西村信紀さんの指導ビデオの中にも、この肘の使い方が出てきます。
言葉というものを使って情報を伝えますので、人によって表現が違います。
西村さんは野球のピッチャーの投げ方を例に取って、ボールに力を伝える投げ方を説明してくれています。
言っていることは分かるけれど、やってみると出来ない。
やっているつもりだけど、ボールにはあまり変化がない。
どうしたらいいんだろうと悩んでいるうちに、他の人の言い方を聞いていて、
「あ~、こういうこと!」
ということに気がつくといく感じですね。
私の言葉で表現すると、
「ブラッシングの前では肘が曲がっていて、肘が体側に触れた瞬間から前腕が内旋するとともに手首を屈曲(変化球の場合は、これに手首の内旋・外旋が加わる)させる。」
ということになります。
かえって分かりにくいですかね(笑)
どれが正解でもありません。自分にあった表現、この言い方がしっくりするし、やってみると良いボールが投げられるというものを見つけるヒントにしてもらえればいいと思います。
みんなで頑張りましょう!